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黒字なのにお金が残らない会社が資金繰りを安定化させる方法

「決算では黒字です。でも、なぜかお金が残らないんです。」

これは、私がこれまで400社以上の中小企業経営者から何度も聞いてきた言葉です。

数字上は利益が出ているのに、資金が足りなくてヒヤヒヤする。最悪の場合は倒産に至る。

これが「黒字倒産」です。

黒字倒産は、経営者が怠けたから起こるのではありません。

根本的な原因は、数字の本当の意味を理解していないこと にあります。

  • 利益=お金が残る、と勘違いしている
  • 資金繰り表を持たない
  • キャッシュフローを見ていない

こうした経営の“盲点”を放置すると、いずれ会社は行き詰まります。

この記事では、なぜ黒字でもお金が残らないのかを整理し、資金繰りを安定化させるための具体的な5ステップを紹介します。

読み終わったときには「なぜ資金が不足するのか」「どう改善すればいいのか」がハッキリ分かるはずです。


なぜ黒字なのにお金が残らないのか?

売上と入金のタイムラグ

会計上の売上計上と、実際の入金は一致しません。

たとえば今月1,000万円の売上を計上しても、入金は翌月末。

その間に仕入れや人件費の支払いは発生するため、資金繰りは厳しくなります。

特に建設業・製造業のように「請負→納品→検収→入金」とサイクルが長い業種では、このタイムラグが資金繰りを直撃します。

在庫や仕入の増加

在庫は“資産”として計上されますが、現金ではありません。

倉庫に積まれた在庫は、実態として「動かないお金」です。

大量仕入や過剰在庫は、黒字でも資金不足に陥る典型的な要因です。

借入金の返済・固定費の重さ

借入金の元本返済、家賃、人件費などの固定費は、利益とは関係なく出ていきます。

「黒字だから大丈夫」と思っていても、返済負担や固定費が重ければ資金は足りません。

銀行が融資審査で「利益」より「返済能力」を重視するのはこのためです。

設備投資・成長投資の落とし穴

攻めの投資は必要です。

しかし資金繰り表やキャッシュフロー予測なしで投資に突っ込むと、一気に資金ショートに陥ります。

私の支援先でも「新工場を建てたら翌月から資金が回らない」というケースを何度も見てきました。


よくある失敗例

  • 売上を追いかけすぎて資金繰りを無視→ 受注が増えたのに資金ショートで倒産。
  • 借入金に頼りすぎる→ 返済のためにまた借金をする「自転車操業」に。
  • 資金繰り表を持っていない→ 社長自身が「来月の資金残高」を把握できていない。
  • 会計事務所に任せきり→ 決算書は作ってもらえても、経営判断に使える数字にはなっていない。

どれも“あるある”ですが、裏を返せば 正しい管理をすれば防げる問題 です。


資金繰りを安定化させる5つのポイント

1. 資金繰り表を導入する

資金繰り表は経営の羅針盤です。

  • 入金予定
  • 出金予定
  • 月末残高

これを1年先まで見える化するだけで、危険な月が一目で分かります。

資金繰り表を持たずに経営するのは、夜道を懐中電灯なしで歩くようなものです。

2. キャッシュフロー予測を行う

資金繰り表に加えて、キャッシュフロー予測を立てることが大切です。

「売上予定」ではなく「入金予定」で管理する。

「支出」ではなく「実際の出金予定」を押さえる。

半年先に資金ショートが見えていれば、銀行との交渉や支出コントロールも間に合います。

3. 固定費を把握・コントロールする

資金繰りを圧迫するのは固定費です。

  • 毎月の人件費
  • 家賃やリース料
  • 借入金返済

理想は「固定費の半分を変動費化」すること。

外注やシェアリングサービスを活用すれば、繁忙期は使い、閑散期は削れる体制を作れます。

4. 資金調達の選択肢を確保する

資金ショートが起きてから銀行に駆け込むのは手遅れです。

銀行が貸したいのは「資金繰りに困っていない会社」。

だからこそ、余裕があるうちに資金繰り表と予測を持って相談するのです。

5. 数字を見える化しDXで管理する

最後に、最も大事なのが 数字の見える化×財務DX

エクセル管理では限界があります。

クラウド会計やBIツールを導入すれば、リアルタイムで数字が見える。

数字が見えれば、経営判断は早く正確になります。

社員も「数字で会話できる」ようになり、組織全体が強くなるのです。


【実例】製造業A社:黒字なのに資金がショートしていた会社が資金繰りを安定化させたストーリー

ここからは、私が実際に支援したある製造業A社の事例を紹介します。

同じように「黒字なのにお金がない」と悩んでいる経営者にとって、きっと参考になるはずです。

A社の状況:決算は黒字、でも常に資金不足

A社は社員30名規模の製造業。

売上は年間6億円、利益も黒字を確保していました。

ところが、社長の口癖はいつもこうでした。

「今月も資金繰りがギリギリだ。黒字のはずなのに、どうしてお金が増えないんだろう…」

実際、月末には銀行口座残高が数千万円しか残らない。

資金ショート寸前の状態が続いていたのです。

問題の核心:売掛金の回収と在庫の膨張

数字を見てすぐに分かったのは2つの問題です。

  1. 売掛金の回収が遅い
    • A社は得意先に対して「末締め翌々月払い」という条件を設定していました。
    • つまり、売上を計上してから実際に入金されるまで2か月以上かかっていたのです。
    • 受注が増えるほど、売掛金が積み上がり、現金不足に陥っていました。
  2. 在庫が過剰
    • 大口の注文に備えて原材料を大量に仕入れていたため、倉庫には常に数千万円単位の在庫が眠っていました。
    • 帳簿上は「資産」ですが、実態は「動かないお金」
    • この在庫が資金を圧迫していました。

取り組んだ改善ステップ

私が提案したのは、以下の5つのステップです。

ステップ1:資金繰り表を導入

まずは1年先までの資金繰り表を作成しました。

入金予定と出金予定を月ごとに整理したところ、「2か月後にマイナス2,000万円」になることが一目で分かりました。

社長は初めて「未来の資金不足」を数字で実感しました。

ステップ2:売掛金の回収改善

主要取引先と交渉し、支払条件を「翌月払い」に短縮。

同時に、未回収の売掛金をファクタリングで早期現金化する仕組みも取り入れました。

ステップ3:在庫管理の徹底

在庫回転率を算出し、基準を下回る在庫は整理。

さらに、発注システムを見直して「需要予測ベースの仕入れ」に切り替えました。

ステップ4:固定費の見える化

毎月の固定費を数字で一覧化。

「なぜこれだけ売上を作っても資金が残らないのか」が、固定費の重さを見える化することで社長自身が理解しました。

ステップ5:財務DXの導入

エクセル管理からクラウド会計+BIツールに移行。

資金繰りやキャッシュフローをリアルタイムで把握できる体制を整えました。

結果:3か月後に資金繰りが安定

改善からわずか3か月で、資金繰りは大きく改善しました。

  • 月末残高は常に1,000万円以上をキープ
  • 銀行との交渉もスムーズになり、新規融資が容易に
  • 社長自身が「数字を読んで先手を打つ」ようになった

何より社長の表情が変わりました。

以前は「毎月が不安」と語っていたのが、今では「先の手が読めるから安心だ」と言うようになったのです。


まとめ:黒字倒産を防ぐには「数字の見える化」が必須

黒字倒産は、誰にでも起こり得ます。

むしろ「利益さえ出せば大丈夫」と思っている会社ほど危険です。

だからこそ、経営者に必要なのは 利益を出す力より、資金を管理する力

そしてその力をつける最短ルートが「数字の見える化」と「財務DX」です。

  • 資金繰り表を持つ
  • キャッシュフロー予測を立てる
  • 固定費を把握する
  • 余裕を持って資金調達する
  • 数字を見える化し、DXで管理する

これが資金繰り安定化の鉄板ステップです。

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